健常者から障害者になった僕が、アズ・イズを通じて実現したいこと

生まれてこのかた、生活に不自由したことはありません。

五体満足で生まれ、大病を患ったこともなく、自分の体を心配する必要もなければ、誰かの障害や病気に目を向ける機会はほとんどありませんでした。

2019年2月12日、インターン先の会社に向かう途中、駅のホームで意識を失い、死にかけるまでの話です。

あの日僕は、目覚めたら障害者になっていた

あの日を境に、僕は健常者から障害者になりました。

母親に話を聞く限り、駅のホームで意識を失い、病院に運ばれてから3日間も目が覚めなかったそうです。

僕には記憶がありませんが、目が覚めると病院に居て、「身体障害者障害程度第1級」になることを宣告されました。

正直、何が起こったのかよく分かっていませんでしたが、僕が生きていることに安堵して涙を流す母を見て、僕が置かれている状況を理解しました。

医師によると、僕は心室細動(しんしつさいどう)という症状を発症し、心臓の心室が小刻みに震え、全身に血液を送ることができない状態になっていたそうです。また、常に再発の可能性があり、体の中に「S-ICD(突然の心停止のリスクがある人々のための皮下植込み型除細動器)」を埋め込む必要があるとのことでした。

発症してから対応が遅れれば死に至る可能性が高く、死に至らなくとも大半の場合、重い後遺症が残るとのこと。しかし僕は、幸いにも後遺症が残っていません。

電子レンジを使用しているときは近づかないとか、スマートフォンを胸から離して使用するとか、ある程度制限のある生活をする必要はありますが、障害者になる以前と以後で、何か大きく生活が変わったかといえば、そんなこともない。

ただ、こうして生かされていることへの感謝はあります。「障害者」に対する意識も大きく変わりましたし、生活や仕事がままならない人がたくさんいることや、生まれながらに障害を持つ人の苦労、そして家族や友人がどれだけサポートしているかを考えることが増えました。

IT業界で働くことを目指しながら、「いつか障害者の役に立つ仕事をすること」が僕の目標になっていました。

障害者と健常者を代表し、見えない壁を壊します

就職活動を始め、いくつか入社先を検討していている際に見つけたのが、今私が記事を書いているメディア「アズ・イズ」を運営する株式会社Specificです。

当時はまだ、メディア事業が立ち上がっていませんでしたが、「これから障害者雇用にフォーカスしたメディアを立ち上げる」と聞き、興味を持ちました。

病院で目覚めたあの日からずっと、「命が助かり、健常者と同じように働ける僕の役割」を考えてきました。「いつか障害者の役に立つ仕事をすること」を目標に掲げ、それまでに実力を磨こうと思っていました。

でも、もしかするとその「いつか」は、実は「いま」なんじゃないかと、何か使命感に似た感情が惹起されたんです。少し綺麗事にも聞こえてしまうかもしれませんが、混じり気のない僕の本音です。

障害者になってから、いい意味でも悪い意味でも、障害者として扱われることが増えました。日常生活に支障がないとはいえ、僕のことを気にかけ、サポートしようとしてくれる人がたくさんいます。

もちろんありがたいですし、嬉しいのですが、たまに壁を感じてしまうことがあるのも事実です。実はそこまで日常生活に苦労はしていないのですが、“障害者”という大きな括りの中で認識されてしまうことで、過剰なまでにサポートを受けることも少なくありません。

病気を発症し、障害を背負ったことは、変えようのない事実です。そこに苦労がないといえば嘘になりますが、とりわけ不幸だと感じることは、そう多くありません。毎日の中に当たり前に幸せを感じられます。

きっと障害者と健常者の間には、こうしたギャップがたくさんある。誰が悪いわけでもなく、正しい理解がないために、どう接していいのかが分からないことが、原因になっていると思います。

僕とアズ・イズはこれから、このギャップを埋める活動をしていきたいと考えています。健常者と障害者、両方の側面を持つ僕だからこそ、伝えられることがあるはずです。

盲目的な“タブー”は終わりにしよう。アズ・イズ、始動

「障害は個性」なんて綺麗事は言いませんが、健常者であっても苦手なことの一つや二つがあるように、障害者も障害に起因する「苦手なこと」があります。ただ、それだけの話。

もっと障害についてオープンに話し、特別視することもなく、フランクにお互いのことを知り合い、助け合える社会がつくれるはずです。

そうした社会の実現に向け、これからアズ・イズでは、障害者のリアル、そして障害者に対する健常者のリアルを発信していきます。

たとえば、雇用の話。働き方が整備されつつあるとはいえ、できる仕事の幅が少なくなりがちな障害者は、自分のやりたい仕事に就けない現状があります。たとえ能力的に十分こなせる仕事であっても、「障害者だから」という理由だけで、その道が絶たれてしまうことも少なくありません。

僕は、障害者の「はたらく」を取り巻く状況が改善されない原因に、「偏った企業目線」があると思っています。この現状が、企業には、「生きていくために『働かなければならない』障害者と、雇用率という法律で『雇わなければならない』会社がある」、そんな風に写っているのではないかと感じます。

繰り返しますが、健常者と障害者を分つ差異などなく、そこにあるのは得意・不得意です。

障害に対する思い込みを排除し、障害について正しく理解する。そして、障害者・健常者を問わず、お互いがお互いを思いやれる社会の実現に向け、今日からアズ・イズは動き出します。

2020年1月10日 アズ・イズ編集長 宮﨑駿

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