なぜ「旅すること」を仕事にできたのか?車椅子トラベラー・三代達也さんに聞く、逆境を力に変えるマインドセット#EditorsEye

編集長宮崎をはじめ、アズ・イズ編集部員が、障がいを物ともせず活躍する方を紹介するコーナー「Editor’s Eye」。今週は車椅子トラベラーの三代達也さんに注目しました。

本日紹介する三代達也さんは、車椅子トラベラーとして、世界中を舞台にする旅人です。

旅の楽しさを発信すべく、車椅子の方でも楽しめるバリアフリーツアーをつくったり、講演会を行ったり。2019年7月には、世界一周の旅の経験を書いた旅行記を出版されています。

同じく障がいを持つ身として、ハンディキャップを物ともせず活動する姿に勇気をもらいました。本記事では、三代さんのこれまでについて、編集長宮崎が責任を持ってリサーチ。 障がいを持つ人も、持たない人にも、三代さんのご活躍が伝わると嬉しいです。

三代さんの障がいは「頸髄損傷」

まず、三代さんの障がいについて。18歳の頃に「ガソリンスタンドからの帰り道に、乗用車と正面衝突する大事故に巻き込まれてしまった」とのこと。 頸髄損傷【けいずいそんしょう】になり、両手両足に麻痺が残り、事故以来、車椅子で生活をされています。



頸髄損傷
交通事故・スポーツ事故・高所からの転落等での頸椎の脱臼・骨折や頸髄自体の病気(腫瘍等)等により、頸髄を損傷して手足を動かしたり、痛みや温度等を感じたりすることができなくなってしまう(四肢麻痺)後遺障害。(Wikipediaより引用)

「このまま一生車椅子なら人生終わりだな」と考えたこともあったそうですが、リハビリ施設で出会ったとある方の一言で、三代さんの人生が一変します。

自分が食べるご飯を施設の方に持ってきてもらっていた姿を見たその方は、三代さんに「お前、甘ったれてんな〜」と一言。最初は「なんだこのやろう」と思ったそうですが、その日から考え方が変化。施設のある静岡県から、両親が待つ東京駅まで一人で帰省するなど、次第に自分の力で行動するようになったそうです。

なぜ車椅子トラベラーになったのか?

車椅子トラベラーになった気かけは、海外での長期滞在だそうです。過去に何度か車椅子で旅に出ていましたが、帰国後は日本の一般企業で働いていた三代さん。 しかし、「今の生活は自分らしくない。やっぱり旅がしたい!」と思うようになり、これまでに挑戦したことのなかった世界一周にチャレンジ。

また、人の役に立つことも旅の目的に設定されたそうで、旅をしながら世界中のバリアフリー情報を発信しようと決意されました。 現在は、「車いすで行く沖縄旅行」や「車いすで行くハワイ旅行」など、障がいを持つ人に向けた旅をプロデュースされています。

編集長宮﨑の推しポイント

僕が皆さんに三代さんを知ってほしい理由は「逆境を力に変えるマインドセットを持っている」と感じたから。三代さんと僕は、後天的に障がいを持ったのが共通点ですが、三代さんは僕よりも多くの不自由を抱えていらっしゃいます。

しかし数多くの挑戦をされ、ついには車椅子で世界一周の1人旅を達成されている。一方僕は普段の生活や仕事をする中で、自分から何か挑戦できているかと聞かれたら、胸を張って「YES!」と答える自信はありません。挑戦したい気持ちはあっても、失敗を恐れて臆病になってしまうのです。

ひょっとすると、読者のみなさんにも同じ悩み抱えている方がいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、三代さんにインタビューを敢行。「逆境を力に変えるマインドセット」をテーマに、お話を聞いてきました。

ちなみに三代さんは、師匠から多くのことを学んだとおっしゃていますが、僕は勝手に三代さんを師匠だと思っています。なのでみなさんも是非、兄弟弟子になってもらえたらなと。

車椅子トラベラー・三代達也さんにお話を聞いてみた

無意識に拒否した障がい者としての自分
—— 交通事故に遭われ、ご自分が障がい者になると知ったとき時、率直にどう思われましたか?

三代さん:「障がいを持った」と伝えられたのは、事故に遭ってから数週間経ってからでした。なので、事故に遭ってから数週間は、「いつになったら治るんだろう?」と疑問に思っていましたね。つまり、障がい者になる認識はなかったんです。

ただ事故から3週間程経った頃、自分の体の状態と障がい名を告げられました。現実感がまるでなく、「どういうことだ?」「何を言ってるんだ?」と、無意識に頭が現実を拒否している状態でした。

—— 簡単に受け入れることは難しいですよね。その後、どのようにしてご自身の障がいを受け入れられたのでしょうか。

三代さん:事故から3ヶ月ほどが経過し、埼玉にあるリハビリ病院に転院したときに、回復の限界を知ったことがきっかけです。「これ以上は回復しない」現実を突きつけられたことで、自分が障がい者であることを自覚しました。なので、自ら前向きに障がいを受け入れられたわけではないんです。

—— そうだったんですね。しかし、現在の三代さんの活動を見ると、ご自分の障がいと正面から向き合っていらっしゃるように見えます。

三代さん:それは間違いなく、静岡のリハビリ病院で出会った師匠のおかげですね。師匠から様々なミッションを与えられ、それを乗り越えていくうちに、気付いたらできることがどんどん増えていて、自分の障がいとも正面から向き合うことができるようになっていました。

世界一周の旅へとつながる、初めての部屋探し
—— 師匠の存在がとても大きかったんですね。これまで三代さんは師匠から多くの言葉をいただいたと伺っていますが、その中で最も心に残っている言葉はなんでしょうか?

三代さん:チャンスは足元にいくらでも落ちている。それに気付けるかどうかはお前次第だ」という言葉ですね。言われた当時は全然ピンとこなかったし、転がってるチャンスを見つけることもできませんでした。

でも師匠から与えられたミッションに挑戦していくにつれて、「あ、ここに落ちてたんだ!」見つけられるようになりました。チャンスを見つけることができたから、今の僕があるんだと思っています。

—— これまで多くの挑戦をされてきたかと思います。その中でも特にご自分に影響を与えた挑戦は、どのようなものでしたか?

三代さん:初めての部屋探しですね。静岡のリハビリ病院を退院した後に、東京で一人暮らしをしたのですが、自分一人で物件を探したんです。そもそも一人暮らしも師匠に与えられたミッションで、急遽決まったこと。電車に乗って東京に何度も足を運び、必死で不動産会社を周りました。

車椅子ユーザーということで断られる回数も少なくありませんでしたが、なんとか1軒、「これだ!」という物件を見つけることができました。この物件もちょっとした段差はあったんですが、師匠が工務店を経営されていて、車椅子でも生活がしやすいように改修してくれました。

—— このご経験が、三代さんの現在につな繋がっているんですね。

三代さん:おっしゃる通りです。初めての部屋探し、初めての一人暮らし。それも地元ではなく東京で、新しい世界を少しずつ開拓していく感触が、僕の今を形づくっています

また、知らない世界を開拓して、自分の世界を広げた当時の経験が、旅行を好きになった一つのきっかけになっていると思います。

一人旅をしたけど、一人旅ではなかった
—— さまざまな挑戦をされてきた三代さんから、挑戦に躊躇してしまう方にアドバイスされるとしたら、どんなことをお伝えされますか?

三代さん:まずは、誰かを頼ることが大切だと思います。最初の一歩を「おっしゃー!」と一人で踏み出すのは、かなり勇気がいること。僕の例で言えば、電車に初めて乗るときも、師匠が電車に乗った経験があったからこそ挑戦できたし、一人暮らしをするときも、多少の段差なら師匠がなんとかしてくれることが分かっていたからこそ、前向きに動けたんだと思います。

挑戦を躊躇してしまうのは、自分が経験したことがなくて怖いからだと思います。なので、周りの人を頼りながら、階段を一段ずつ登るようゆっくりとクリアしていけばいい。これを繰り返していくと、気づいた頃にはもともと躊躇していた挑戦も、難なくクリアできているはずです。

その実、僕が達成した世界一周旅行も、多くの人がサポートしてくれたからこそ達成できたものです。

—— 三代さんご自身も、周りの人に助けられながら多くの挑戦を重ねてこられたんですね。

三代さん:僕の世界一周旅行は、「一人旅をしたけど、一人旅ではなかった」と思っています。行く先々で現地の方や、SNSなどを通して知り合った方々に何度も助けてもらいました。

そもそも、世界一周旅行に踏み出すことができたのも、トラベラーの先輩である山下マヌーさんのアドバイスがあったからです。

やはり仕事をやめて世界一周旅行に挑戦するとなると、不安が大きかった。そんなときに山下さんが「先のことは考えなくていいから。世界一周というせっかくチャンスを、精一杯楽しんできなよ!」と言ってくださったんです。

この言葉を聞き、プレッシャーに押し潰されそうになってた気持ちが軽くなって、心から旅行を楽しむことができました。

—— 自分の挑戦だからといって、自分1人でどうにかしようと抱え込んでしまってはいけないということですね!

三代さん:そうですね。一人でなんとかしようして、結局踏み出すことができなくなってしまっては本末転倒です。繰り返しになりますが、まずは周りを頼ること。そうやって小さな一歩を積み重ねていけば、いつか「自分から挑戦できる人間」になっていると思います。

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頸髄損傷とは、どんな障がいなの?

記事の最後に、三代さんがお持ちの「頸髄損傷」とは、どんな障がいなのかを解説します。

頸髄損傷とは、交通事故やスポーツでの事故によって、頸椎が大きなダメージを受ける、もしくは頸髄自体の病気によって、発症する障がいです。手足を動かすことができなくなったり、物に触れた感触や暑い、寒いといった感覚を受け取れなくなってしまう、といった症状が発生します。

一言に頸髄損傷といっても、症状は人によってさまざまです。頸髄や脊髄からは非常に多くの神経が伸びており、それぞれが役割を持っています。そのため、どの部分をどれだけ傷つけたかによって、症状は異なります。

神経が完全に途切れ、体の該当する部分を全く動かせなくなることを、完全麻痺と呼び、部分的に途切れ、所々が動かなくなることを不全麻痺と呼びます。

頸髄損傷では、体が動かせなくなる、感覚がなくなる以外にも、複数の症状が存在します。

  • 運動機能障がい
  • 損傷した部位に該当する体の箇所が自由に動かせなくなる。頸髄は呼吸するための機能も持っているため、場合によっては人工呼吸器が必要になることもある。

  • 知覚機能障がい
  • 麻痺している部分の感覚が無くなり、暑い、寒い以外にも痛いといった感覚も無くなり、怪我に気付くのが遅れたりすることもある。

  • 体幹機能障がい
  • 腹筋や背筋などの筋肉が麻痺した場合、座ったままの姿勢でいることが困難になる。

  • 自律神経障がい
  • 汗をかく機能も麻痺することがあるため、体温調節ができなくなくなってしまう。

  • 排泄機能障がい
  • 排泄する際に使用する筋肉が麻痺すると、排便や排尿を自分の意思で行えなくなる。カテーテルや座薬を使用することで、排泄行動を行う。

先ほども解説したように、頸髄損傷はダメージを受けた部位や損傷具合によって、症状に大きな差が出ます。そのため、同じ頸髄損傷を患っている方でも、抱える障がいをそれぞれによって異なり、自身の対策や必要な配慮も異なります。今後、頸髄損傷を患った方と関わる機会があった場合、このことを踏まえた上で、行動に移すようよろしくお願いします。

参考記事

車椅子での世界一周の旅が、僕の人生を変えてくれた。18歳で事故に遭い、頸髄損傷した三代達也さん

“出会い”がいつも僕を救ってくれた。車椅子トラベラー・三代達也が世界一周をした理由

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