障害でオシャレを諦めけかた人たちへ——アクセサリーに魅せられた女性がバリアフリーアクセサリーに人生を懸ける理由

人生において「前向きな気持ちが大切である」とはよく言いますが、人間なら誰しも、強い喪失感や絶望感に苛まれてしまうことがあると思います。しかし、そんな苦しい状況から脱するきっかけは、意外な場所にあるかもしれません。

今回インタビューをしたのは、片手で装着できるバリアフリーアクセサリーブランド『URMUSE』のオーナー、てらさきかおるさん。元々16年間、アクセサリー教室の先生として活動しており、あることをきっかけにバリアフリーアクセサリーに興味を持つようになったそうです。

2019年の4月からは、アクセサリーの販売だけにとどまらず、バリアフリーアクセサリー講師の認定講座を開催。講座に参加した障害者が、レッスンを通じて前向きに変わっていく姿をみてきた寺崎さんは「自分に自信を持つことが何よりも大切」と語ります。では、自信を取り戻すためには、どのようなマインドセットを持つべきなのでしょうか。『URMUSE』のエピソードと絡めながら、お話いただきました。

体の傷は癒えても、心の傷は癒えない

—— 寺崎さんはこれまで、16年間アクセサリー講師をしていらしたとお伺いしています。どのような経緯で、「URMUSE」を立ち上げられたのでしょうか。

寺崎:「URMUSE」を立ち上げる以前、アクセサリーが持つ「人を活き活きとさせる力」に魅せられて、高齢者向けのアクセサリーをつくっていました。

当時は、バリアフリーアクセサリーについて何か興味を持っていたわけではないのですが、会場にいらしていた福祉施設のナースさんに、杖ホルダーのデザインを頼まれたことがきっかけで、「URMUSE」を立ち上げることになったんです。

そこでは、「リボンやキラキラがついた、ピンクが基調の可愛いデザインにしてください」とオーダーを受けました。それまで、杖といえばお年寄りのイメージを持っていましたが、利用者は若い女性だったのです。

お話を聞いてみると、脳卒中を発症し、半身不随になってしまったとのこと。遊び盛りの女性にとって、自由にオシャレができない苦しみは計り知れません。

私に依頼をしてくれたナースの方は、「リハビリで体が回復しても、一度ついた心の傷を癒すことは難しい」とおっしゃっていました。

てらさき かおる
カジュアルアクセサリー「バニアン・ツリー」 バリアフリーアクセサリー ®︎「ユアミューズ」を主宰。これまで5歳〜83歳の初心者さんのへ4500人にアクセサリー作りを教え、 オリジナルのハントメイドアクセサリー4000件を販売。イベント、Webショップ、委託、カルチャースクール、百貨店出店、 企業との取引、デザイン提供、卸販売、大規模ワークショップ企画など、業界での実績を生かし、障害があっても楽しめるバリアフリーアクセサリースクールを立ち上げた。
—— そこで、アクセサリーを通じて、オシャレを諦めてしまった女性たちの心の傷を癒そうと考えたんですね。

寺崎さん:その通りです。当時つくっていた高齢者向けのアクセサリーに工夫を施し、片手が不自由な方でも装着できるバリアフリーアクセサリーをつくることにしました。アクセサリーの力で、オシャレを諦めた女性にもう一度明るさを取り戻してもらおうと思ったんです。

そこから独学でバリアフリーアクセサリーについて学び、2017年には、脳梗塞や脳卒中の方のための文化祭『脳卒中フェス』に出展。そのとき、障害を持ったお客様が私のつくったアクセサリーを装着して大喜びしている姿が、私の心を大きく動かしました。「これを一生の仕事にしよう」と決めたんです。

オシャレを諦めてほしくないから

—— 現在、バリアフリーアクセサリー講師の認定講座も開始されています。作品をつくるだけでなく、認定講座をはじめたきっかけはどこにあるのでしょうか。

寺崎さん:先生になることの喜びを、みなさんにも知ってほしかったからです。そもそも私自身、アクセサリーのつくり方を独学で学んできたこともあり、先生になれたときに「ついにここまで来られた!」と、すごく嬉しくて。

また先生として活動し始め、生徒さんが喜んでいる姿を見たときに「みなさんも先生になれたら嬉しいのではないか」と思ったんです。

—— 現在、レッスンはどのような形で進めているのでしょうか。

寺崎さん:半年間で14種のバリアフリーアクセサリーをつくるプログラムを提供しており、教える内容はアクセサリーのつくり方だけに留まりません。 認定講座は、バリアフリーアクセサリーをより一層広めていくためのもの。生徒のみなさんには今後、講師として活躍してほしいので、人に教えるためのノウハウや、SNSを使った集客術も教えています。 生徒さんは半年ごとに変わる入れ替え制で、現在は7名の生徒さんと、前期のレッスンに参加していた2名がアシスタント講師として参加しています。

—— 生徒さんにはどのような方が多いのでしょうか?

寺崎さん:目的はそれぞれ異なりますが、大前提として、私の目指すゴールに賛同していただける方にのみ、レッスンにご参加いただいています。バリアフリーアクセサリーは、あくまでも障害を持つ方を元気付け、笑顔を取り戻すためのもの。お金儲けやメニュー増やしの道具にしてほしくないので、レッスン参加希望者とは必ず事前面談をし、あまりにも方向性が異なる場合は参加をお断りさせていただいています。

逆に、同じ方向性を目指している方であれば、年齢も障害の有無も関係ありません。実際に、今レッスンに参加している生徒さんも年齢層は20代〜60代と幅広く、障害を持っている方も持っていない方も一緒にレッスンを受けています。障害を持っている方が手助けを必要としているとき、周りの方が手を差し伸べるシーンもよく見かけますね。

—— みなさんで助け合いながら授業を進めているんですね。寺崎さんとしては、障害を持っている方と持っていない方に同じレッスンを提供する上で、障害者の方に対して特別な配慮はしていらっしゃいますか?

寺崎さん:障害はそれぞれによって異なる特性があり、一括りにはできません。むしろ「障害があるから」と先入観を持つことがマイナスに働いてしまうことがあるので、常にフラットな目線を持って接するようにしています。

ただ、障害の有無に関わらず、生徒さんには常に「他人と自分を比べないでください」とお伝えするようにしています。人が集まって同じことをすると必ず個人差が出ますが、そこに優劣はないからです。

自分の成長を見たいのなら、他人ではなく数ヶ月前の自分と比べるべきです。「あの人はできているのに、自分にはできていない」と考えてしまうと、どんどん自分に自信がなくなってしまいますよね。

アクセサリーから、ポジティブな未来をつくる

—— 今まで講座に参加された生徒さんのなかに、認定講座を通してポジティブな変化があった方はいらっしゃいますか?

寺崎さん:「今までは、やりたいと思ったことも自分にはできないと思っていたから、諦めるための理由を探していた。こうしてアクセサリーの先生になれたなんてまるで夢のよう」「死にたかったけど、半身麻痺の私にはそれもできなかった。今、20才の頃の手芸の先生になる夢が叶って、涙が出るほど嬉しい」——どちらも生徒さんからいただいた、忘れられない言葉です。


また、初めて私の講座に参加してくださった半身麻痺の生徒さんは、レッスンに参加するまでほぼ家から出ない生活を送っていました。外出といえば、介護タクシーを使って病院へ行くくらい。ところがレッスンをきっかけに、月に一度電車を乗り継ぎ東京まで出てきてくださるようになったんです。

その方が認定講座を始める前後の写真を見比べると、まるで別人のように印象が違います。以前は控えめな服装をしていましたが、今ではすっかりお洒落になって、メイクもきちんとするようになりました。外見の変化と共に中身まで明るくなり、周囲の人からも「変わったね」と言われるそうです。

—— 自分に自信を持つことで、人は前向きに変われるんですね。

寺崎さん:本当にそう思います。そして、そこには障害の有無は関係ないと思っています。

レッスンでも、生徒のみなさんにはポジティブな言葉を使うように指導をしています。「私になんてできない」や「もうダメ」といったネガティブワードは禁止。「疲れた」を「よく頑張ったなあ」に切り替えるだけで、人は前向きな気持ちになっていくものです。

そして、自信を失っているときこそ、まず一歩踏み出し、挑戦してみることが大切。一度挫折を経験した方は「また失敗したらどうしよう」と怖い気持ちがあるかもしれませんが、その一歩が、自信を取り戻すチャンスになるかもしれません。

—— 一歩踏み出せた自信が、また次の一歩にもつながりそうですよね。最後に、今後バリアフリーアクセサリーを通じて叶えたい目標を教えてください。

寺崎さん:バリアフリーアクセサリーを通し、障害者が活躍できる場所を増やしていきたいです。

今の日本はまだまだ、「バリアフリーな社会」とは言い切れないと思っています。レッスンの教室を借りるために物件を見て回ったとき、車椅子や杖の利用者に適した物件は少ないと感じました。

障害者がより暮らしやすい社会にするためには、障害者の発言力を向上させる必要がある。そのためには、障害者が活躍できる場所を増やしていかなくてはいけません。その活躍できるフィールドの一つとして、バリアフリーアクセサリーを広めていきたいです。

また、現在レッスンは東京で開催しておりますが、オンラインでの受講も可能なため、地方在住の方でも同様のレッスンの受講が可能です。

ただ、地方在住の方の中にも、対面レッスンをご希望される方がおおくいらっしゃいます。そういった場合には、各地の認定教室をご紹介しています。

今後は、日本全国に認定講師がいる状態を目指し、最終的には世界中のどこにいても、バリアフリーアクセサリーの対面レッスンが、受講できるような仕組みをつくっていきたいです。

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