「成果を正当に評価する会社なんです」——大塚商会・土谷知子さんに聞く、障害の有無に関係ない評価制度

障害者の「はたらく」を取り巻く環境は、理想と現実が乖離しているのが現状です。
なかなか就職先が見つからなかったり、仮に就職することができても、障害への理解のなさから生まれる人間関係に悩み、早期退職をしてしまう方がたくさんいます。

そうしたなかでも、障害者が障害にとらわれずイキイキと活躍できる環境づくりに力を入れている企業も少なくありません。

編集部では、障害者雇用のあるべき姿を実現するリーディングカンパニー50社を“Top of 50”として取り上げ、その取り組みを取材しています。

記念すべき第一弾は、東証一部上場企業・大塚商会の土屋知子さんにインタビュー。大塚商会は、障害者と健常者を区別しない人事制度を採用しており、働く障害者の半数が役職者だそう。

障害を持つ当事者の土屋さんに、働く環境の魅力や、具体的な取り組み、今後目指す会社像について詳しくお話を伺いました。

ハードワークで体を壊し、転職を決意。「面接でときめいた」大塚商会へ

—— 土谷さんがお持ちの障害について、お伺いさせてください。

土谷:社会人になる直前に脳脊髄炎を患いました。一時期は全身が動かなくなり、植物状態になってしまう可能性もあったんです。 幸い上半身は不自由なく動かせるまでに回復しましたが、下肢に麻痺が残り、車椅子で生活をしています。

—— 障害をお持ちになったことで、以前とは生活が激変したと思います。働く選択肢もある程度制限されたのではないでしょうか。

土谷:そうですね。実家が居酒屋を経営していたこともあり、いずれは居酒屋の女将さんになろうと思っていましたが、車椅子では現実的ではありません。 接客業を自分の仕事にする夢は叶いませんでしたが、せめてサービス業界で働こうと考え、新卒でホテル業界へ就職しました。

ただ、嬉しいこともありました。バックオフィスが主たる業務だったので、いわゆる接客業務に従事する機会は多くありませんでしたが、ブライダルフェアの受付を任せてもらうなど、学生時代にやりたかった仕事を少ないながらに経験させていただけましたね。

—— 少しでも、やりたかった仕事に従事することができたんですね!ではどうして、転職をされてしまったのでしょうか?

土谷:仕事にやりがいがなかったわけではないのですが、業界の特性上、とにかく残業が多かったんです。 労働時間が長い、文字通り「働きづめ」の毎日を過ごすうちに、体を壊してしまいました。

車椅子利用者は、長い時間座り続けていると下肢に感覚が無いため、床ずれを起こしてしまい私は1ヶ月ほど入院しました。 幸い大事には至らなかったものの、会社に戻ればまた同じことを繰り返してしまいます。そこで初めて転職を決意し、入社したのが大塚商会です。

—— そうだったんですね。ちなみに、転職先はどのようにして探されたのでしょうか?

土谷:エージェント経由で、身体の状態と理想に合う環境を探しました。

意識していたポイントは、就業規則や制度がしっかり整っていることと、成果に対してしっかりと評価をしてくれる会社、つまり“実力主義”の社風があること。

障害がある分、長時間労働は難しい。だから、働きやすい環境が大前提です。

とはいえ働く意思や仕事を頑張りたい気持ちは強いので、年功序列ではなく、結果が正当に評価される社風の会社で働くことを目指していました。

—— そうした理想の環境を探してたどり着いたのが、大塚商会さんだったと。

土谷:そうですね。内定をいただけ嬉しい気持ちの反面、不安も大きかったです。

—— そうだったんですか? ではどうして、入社を決められたのでしょうか。

土谷:面接に訪れ、働く社員を見たときに携帯を片手にPC操作をしている社員がいたり、次々にいらっしゃるお客様の多さに驚き「活気のある会社」「この人たちみたいなカッコいい社員になりたい!」と一瞬で憧れました。

それまで大塚商会の事業のことはあまり知らなかったので、「どんな会社なんだろう?」「活躍できるイメージが湧かない」などと思っていましたが、良い意味で自分の想像とはかけ離れた、厳しさの中にあるカッコよさに惹かれました。

私が以前勤めていたホテルのユニフォームもかっこいいのですが、私にはスーツ姿でバリバリと働いている社員の姿がとても新鮮で、憧れたんです。

紹介された当初は入社意欲の低い会社でしたが、選考が進むにつれ一番入りたい会社に代わりました。 結局他社の内定を断って入社し、もうかれこれ13年になります。

大塚商会は、障害のある社員を区別しない—— 誰もが平等に活躍できる環境を目指して

—— 実際に働いてみて、大塚商会さんに「働きやすい環境」と「結果が正当に評価される社風」はありましたか?

土谷:「働きやすい環境」の定義は人によって変わると思いますが、大前提バリアフリーなオフィスです。

事業所にもよりますが、障害者用のトイレは当たり前にありますし、広いエレベーターや、スロープもあります。

今でもアップデートを随時しています。働く全員の声を拾いきることはできていませんが、面接の時点で必要になる補助器具を用意するなど、その都度ベストな対応ができるよう心がけています。 配属後も定期面談を実施し、必要なサポートに不足はないかを確認し入社した方が最大限パフォーマンスを発揮できるようにしています。

また、障害者であっても結果が正当に評価される社風は、弊社の特徴だと思います。 障害の有無に関係のない評価制度があり、障害をもって働いている社員の大半は、何らかの役職を持って働いています。会社の利益を社員に還元する会社なので、福利厚生面も充実していると感じています。

ただ、障害者と健常者を区別せず「正当に評価する」ので、ある意味“障害に甘えてしまう”人には向かない環境かもしれません。障害がある場合、不調になりやすいこともあります。 その分、パフォーマンスが落ちてしまうこともあるでしょう。だからといって、「障害があるから特別視する」ということはせず、障害に無理の無い範囲でパフォーマンスを発揮してもらっています。

私は周囲の助けを積極的に借りながら、毎日仕事をしていますね。

—— 困ったときは、声を上げやすい環境なんですね。

土谷:そうですね。大塚商会だけがそうだとは思いませんが、みなさん自然に助けてくれますよ。

私はサポートを受ける障害者側こそ、心のバリアフリーを意識すべきだと思っています。 「助けを求めたら迷惑かな」とか「声を上げても助けてくれないだろう」といった思い込みや、偏見を持ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。

でも、健常者間でも、困ったら当たり前に助けを求めますよね。 健常者や障害者である前に、私たちは同じ人間です。苦手なことも、できないことがあって当たり前。そうした前提を持って働いていれば、些細なことは気にならないと思います。

“障害に隠れない”ポジティブさが、活躍の鍵

—— とっても素敵な考え方ですね。大塚商会さんでは、そうした気持ちを持てる方が採用対象になりますか?

土谷:「障害があっても、障害に隠れない人」と働きたいと思っています。

大塚商会は、障害にとらわれず、パフォーマンスを発揮したいと考えているポジティブさがあれば、活躍できる環境です。

先ほどもお話ししましたが、配属先や仕事の内容など、活躍するためのサポートは充実しています。そうした環境をフル活用して、「プロとしてしっかり結果を出す」という前向きな気持ちを持っていてほしいです。

—— 土谷さんは、面接を担当される人事職をされているんですよね。障害をお持ちだからこそ分かる、障害者の苦労に配慮されることもあるのでしょうか。

土谷:障害者が抱える“不自由さ”をしっかり拾い、それを会社に伝えることは意識していますね。

たとえば、「ちょっとした段ボールが邪魔になっている」「ここに手すりがあれば便利だ」など。そうした苦労は事前に汲み取り、困ってしまうことがなくなるよう、人事として、また障害を持つ当事者として、事前に社内の理解を深める動きをしています。

また健常者だけでなく、障害者にも、働く上での注意点を口酸っぱく伝えています。 障害があると、健常者にとっては大したことのない風邪などの病気も、大病を招くきっかけになることがあります。だから、常々通院の重要性を説いています。しつこいくらいにね。

—— いやいや、そうした声かけがあるからこそ、みなさんが健やかに働くことができているんだと思います。

多様な選択肢をつくり、障害者雇用の未来に貢献したい

—— 先ほど「心のバリアフリー」というキーワードも出てきましたが、私たち編集部は障害者と健常者の間に、まだまだ壁があると感じています。世間一般の風潮に、土谷さんが感じることはありますか?

土谷:私は以前健常者で、その当時は障害に対して理解がなかったと思います。 正直な話、「車椅子で大変そうだな」とか「知的障害がある場合はどうやって生活しているんだろう」と、考える程度でした。

ただこうして障害者になり、障害は身近にあるものだと気づかされ障害のある人・ない人の間に、少なからず壁を感じることもあります。

壁をなくしていくためには、身の回りに起こることを、自分が障害者だったと仮定して考える時間があればいいのではないかと思います。

たとえばタイピングをするにも、指が不自由であれば苦労しますよね。そうやって想像するだけで、大変さが分かり、人に優しくなれるはずです。 とはいえ、助けを借りたくない人がいるかもしれません。だから、「壁をなくす」というのは本当に難しい課題です。

—— 障害の有無にかかわらず、「人と人」であるという当たり前の前提を大事にすればいいのではないかと感じました。

土谷:そうですね。性格が人それぞれ違うように、障害も人それぞれです。色眼鏡を外し、障害に関係なく、相手のことを考えて、円滑にコミュニケーションすることの方がよっぽど大切ですね。

—— 土谷さんは、障害者が働く環境が、どのように変化していけばいいとお考えですか?

土谷:働き方の選択肢が増えると嬉しいですね。採用する側になり、一口に「障害者」といっても、通勤が困難な人や、そもそも働くことができない人がたくさんいると分かりました。 仕事を通じて、社会と関われない人が少なくありません。

障害者採用を普及していくには、会社という組織だけではなく、もっと多様な選択肢が持てるようになればいいなと思います。

—— 最後になりますが、大塚商会さんとして、今後目指す雇用の形についてもお伺いさせてください。

土谷:障害者雇用への理解をもっともっと深めていきたいですし、今はまだ障害者の方が働いていない部署でも、雇用を増やしていければと思っています。 サポート体制の拡充には力を入れているので、私たちを良い意味で利用しながら、活躍してくれる障害者の方が一人でも増えてくれたら嬉しいです。

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