「働きやすさ」は、制度ではなく人がつくる—— ENEOS現役社員が語る「生のコミュニケーション」の大切さ

障がい者の「はたらく」を取り巻く環境は、理想と現実が乖離しているのが現状です。 なかなか就職先が見つからなかったり、仮に就職することができても、障がいへの理解のなさから生まれる人間関係に悩み、早期退職をしてしまう雇用者がたくさんいます。

そうしたなかでも、障がい者が障がいにとらわれずイキイキと活躍できる環境づくりに力を入れている企業も少なくありません。 今回編集部が注目したのは、ENEOS株式会社。同社は“日本の障がい者雇用の牽引する企業”として、「エラビバ Top of 50アワード」にも選出されています。

本シリーズの第五弾は、ENEOS株式会社の高橋(仮名)さんと近藤(仮名)さんにインタビュー。 障がいがありながらもイキイキと働くお二人のお話から本当の“ダイバーシティ”について考えてみました。

障がいの全てが「一目で分かる」ものではない。私たちの、転職理由

—— はじめに、お二人の障がいについて教えてください。

高橋:私の障がいは、生まれつきの下肢障がいです。 日常生活で歩きづらさを感じることや、たまにバランスが取れなくなることがありますが、周囲からは障がいがあることを認識しづらい程度です。

近藤:私の障がいは“てんかん”です。以前から「部分発作」の症状は自覚していたものの、まさか自分に障がいがあるとは思っていませんでした。 しかし30歳のとき、転職直後の忙しさや睡眠不足が引き金となり、「全般発作」を発症。そこで、障がいがあることに気づきました。

「全般発作」と「部分発作」の違いは「意識が遠のくかどうか」です。 過去一度のみ発症した全般発作は完全に意識を失ってしまうものですが、現在も時々発症する部分発作では体の一部が微かに震える程度ですので、仕事中に発作を起こしても周囲に気づかれないことがあります。

—— たしかに、パッと見ただけでは、お二人に障がいがあることには気づけないかもしれません。職場にはご自身の障がいについて公表していたのでしょうか。

高橋:現在の事務職の仕事に就く以前は、リハビリのセラピストとして病院に勤めていました。 障がい者雇用ではなく一般雇用で入社したため、職場の人たちは私の障がいについて詳しく知りません。 しかし、患者のサポートをする際など、結果的に誰かの手助けが必要な場面は多かったように思います。

近藤:以前勤めていた職場には、自身の持病を公表できる雰囲気がありませんでした。 特に私の場合、入社当時は自分の障がいに気づいていませんでしたし、 営業職だったので「いまさら障がいがあることがバレたら、仕事を辞めざるをえない」というプレッシャーを感じていましたね。

結果、体調が崩れたときも他の人を頼ることができず、自分で対応するしかなかったため、精神的に辛かったです。

—— 障がいが関係して、苦労をする機会があったんですね。転職をされたきっかけについても、お伺いさせてください。

高橋:年齢を重ねるにつれ、病院での立ち仕事や患者さんの補助に、体力的な厳しさを感じるようになったからです。 患者さんの安全面を考慮しても、このまま病院に勤務し続けることは難しいと思いました。 そこで4年半前に、事務職に転職。ENEOSに転職するまで、3年間勤務しています。

近藤:全般発作を起こした後、しばらく体調不良が続き、一般企業で働く自信を失くしていたので、リハビリも兼ねて障がい者の就労継続支援事業所に転職しました。 幸いにも、一昨年ごろには症状が落ち着き「そろそろ本格的に働きたい」と思ったため、3社目としてENEOSへの入社を決めています。

—— 数ある企業の中から、ENEOSへの入社を決めた理由を教えてください。

高橋:大きく二つの理由があります。一つは、フレキシブルで自由な社風だったこと。 面接の際に「障がい者」というバイアスを通さず、フラットな視点で向き合ってくれているように感じ、「色々な仕事を任せてもらえるチャンスがありそうだ」と思いました。

もう一つが、面接の段階で、「契約社員から正社員登用がある」と明確に示してくれたことへの安心感。 前の職場では、働く前は「正社員登用がある」と聞いていたのに、蓋を開けてみたら一向に進展する気配がなく退職に至ったので、その点に関しては慎重になっていました。

近藤:私も高橋さんと全く同じで「障がいがあっても、裁量権を持って働くことができそう」と感じたことと、正社員登用の可能性があったことです。

制度を整えても、環境は変わらない。意識の変化が、環境を変える

—— 入社してみて、実際に「障がい者が活躍できる環境だ」と感じたエピソードがあれば、教えてください。

近藤:他社には、特例子会社や障がい者だけを集めた部署をつくっている会社もありますが、弊社では、障がい者に対してそういった特別枠を設けていません。 その分、苦労することも多いのですが、多額の資金調達業務等、一般社員と同等の仕事を任せて貰えている実感はあります。

加えて、仕事仲間も必要以上に過剰な気遣いをしてくることはないため、普段は障がいのことをさほど気にすることなく仕事をすることができています。

—— 「障がいのことをさほど気にならない」のは、働きやすい環境の証明ですね!何か特別な制度やルールがあるのでしょうか…?

高橋:障がい者に対する特別な決まりに関していえば、契約社員は有給とは別に、定期通院のための休暇を取得できる配慮があります。

また障がい者だけに向けた制度ではありませんが、テレワークやフレックス制度も、働きやすい環境づくりを支えてくれています。 たとえば私は足が不自由なので、満員電車での通勤に不安があります。そのため、早めに出社し、早めに退社することを認めてもらっているんです。

—— 全社を通してフレキシブルな体質が浸透していると、やむを得ない事情で早退や欠勤をしなくてはいけなくなったときに、気負わずに済みますね。

高橋:おっしゃる通りです。ただ、そういった柔軟性や寛容な姿勢は、単にルールや制度を整えただけでは手に入らないと思っています。

私が面接を受けた際は、採用担当者が障がいがある方でした。話をしていて感じたことですが、ENEOSには、そもそも障がい者への理解がある。 入社後も、「障がい者雇用の人」と一括りにされるような閉塞感を味わったことはありません。 現在も、自分の障がいと働き方について、相談できる環境が整っています。

近藤:多くの上司は障がい者を部下に持つ経験は初めてですが、皆さん真摯に向き合い、きちんと私を理解しようとしてくれるんです。 入社後初めてお世話になった上司は、月に一度面談を実施してくださいました。 今のグループのメンバーも温かく接してくださっており、働きやすい環境は何よりも「人」がつくるものなんだと実感しています。

先入観は、何も生まない。ダイバーシティの実現に必要なこと

—— 近年、世の中にはENEOSのように「障がい者が活躍できる場所」が増えてきているように思います。 実際に障がいをお持ちの高橋さんと近藤さんの目線には、今の社会はどのように映っているのでしょうか。

高橋:時代と共に、障がいがある人とない人の溝は埋まってきているのではないでしょうか。 ただ、「どんな障がいかは、人によって異なる」という事実を忘れ、無意識のうちに「障がい者はこう」と決めつけてしまう人は多い気がしています。

そういった先入観を取り払うためには、リアルなコミュニケーションが必要です。 障がいがある人は、自分にできることとできないことを明確に示すべきですし、障がいがない人は、思い込みで対応するのではなく、コミュニケーションによって相手について判断するべき。

誰しも「自分が経験していないこと」を完全に理解することは難しいと思いますが、何より大切なことは「一人の人間としてすべきこと」を相手にすること。 街中で困っている障がい者を見かけた場合「どうしたらいいんだろう」と戸惑うかもしれませんが、遠慮せずに声をかければ、皆さん喜んでくれると思いますよ。

近藤さん:障がい者に限らず、先入観を抱くことは、相手について誤った認識を持ってしまう原因となり得ます。 誰かと関わる際に、国籍や性別、障がいの有無といった肩書きやレッテルに振り回されず、一人の人間として関わることが大切だと思います。

—— ダイバーシティの観点から、自社に対して「改善の余地がある」と感じる点はありますか?

近藤:正社員への登用制度は2018年に始まったばかりですが、正社員になった後、自身の障がいとも向き合いながら定年まで長く働き続けることを前提としたキャリア形成が大切だと感じています。 現在の人事制度や仕組みの大半は、マジョリティを対象としたものになっているのは、当社だけではないと思います。

個人的な制約や価値観、働き方が多様化する中で障がい者に限らず、誰もが長期的なキャリアを形成することができる仕組みづくりは、これからが本番なのだと思います。 「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現することで障がいがあっても、より活躍しやすい環境に近づくのではないでしょうか。

高橋:今はまだ、“ダイバーシティ”という概念に、実態が追いついていない部分がありますね。 一人ひとりが先入観を持たずに対面のコミュニケーションを大切にすれば、本当の意味での“ダイバーシティ”の理解につながるはず。 社会的にもまだまだ動き出したばかりだと思いますが、少しずつでも、誰もが生きやすい環境になればいいなと思います。

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